OPECplusの不協和音
現在の三大産油国といえば、サウジアラビア、ロシア、そしてアメリカとなります。シェール革命に成功したアメリカは現在では原油の輸出国として君臨するようになったのです。これまでOPECというアラブ諸国を中心とした産油国からなる組織が市場価格を決定していましたが、現在OPECplusとなり、ロシアが加わっているのです。そのOPECplusのメンバーで特にサウジアラビアは2016年以降下落基調が続いている原油価格を安定させたくて、減産を主張していました。しかし、最終的にロシアが難色を示した結果、原油価格が直近の1バレル55ドル前後で推移していたものが、突然半分の30ドル台前半へと急落したのでした。
原油価格下落で窮地に陥るのは誰か?
この原油価格暴落はサウジアラビアからのロシアへの挑戦ともいえます。しかし、このサウジアラビアが投げたブーメランは、やがてサウジアラビアへと跳ね返ってくる可能性がとても大きいのです。この暴落でサウジアラビアのダメージはかなり大きくなることが予想されます。これまで、サウジアラビアの財政は芳しくなかった上での今回の処置なので、どれほど後遺症が残るのか注意が必要です。
さらに大きなダメージが確定している陣営は、アメリカのシェール産業です。元々コストが高くつくシェール生産なので、企業は借金体質での運営を強いられていました。
しかしこれほどまでに原油価格が暴落してしまうと、どうしても採算ラインを超えることも想定されます。元々このシェール産業は30ドル程度を割ってしまうと赤字転落ということになり、元々借金体質でジャンクボンド(リスクの高い社債)を連発しているため瀕死の重傷を負ってしまう可能性は高いといえます。
誰が得をするのか?
金融不安の最中の原油暴落は、最後に誰が微笑むのでしょう?
第一は、ガソリンを大量に消費する米国国民といわれています。彼らは日々通勤や通学で大量のガソリンを消費しているので、ガソリン価格の低下は家計的にも大歓迎なのです。その影響もあって、トランプ指示も上昇しているようです。
第二は、原油の輸入大国である我が国、日本です。
我が国は原油価格が上がると、ガソリン代だけでなく、原油を原料とした電気代など、生活インフラ全体の価格が上昇する社会システムとなっています。その中で原油価格が暴落するということは、ガソリンの市場価格の下落につながり、その結果我々の生活インフラの費用が大きく削減されるのです。
一度下がった原油は株などと違い、急に上昇するには各国の思惑が複雑に絡み合っているため容易ではないといえます。
原油価格がこれからどのように金融市場にへと影響を与えるのかは十分注意が必要といえそうです。
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